就活失敗した俺の話を聞いてくれ

「就活やめるのもありかもしれない」「いや就活やらないなんて終わってんだろ」人それぞれ思うことはあるかもしれない。その「思う」という行為をさせることができれば、自分としては書いてよかったと思える。

8月のクソ暑い日、会社説明会の帰り、ショーウインドウに映った自分の姿を見て就活をやめた

ESすら通らなかった

周りの皆と同じように、俺もまた就活を始めた。行きたい業界は特に決まっていなかった。就活しているうちに決まるものだと思っていた。 

売り手市場ということもあって、強気で始めた就活。とにかく大手を見ていた。似合いもしないスーツ姿で、いろいろな会社説明会に行って就活しているつもりだった。

かっこよく市場や未来を分析してみて、多くの会社から自分なりにエントリーする会社を絞った。そして絞った会社のことを好きになるように努めた。「雰囲気が自分に合っている」「社員の方が素晴らしい」「今後もっと伸びる会社だ」そんな風に、いい感じに好きな理由を頭に思い浮かべ、自分を洗脳し続けた。

そして、その会社の好きなところをESに盛り込みながら、自分の大学時代のことや志望理由などを書いた。 

結果、ES2つしか通らなかった。びっくりするほど通らなかった。あんなに説明会に行ったのに、と思ったが、そんなの向こうにしてみればどうでもいいんだろう。好きなふりをしていたが、ESが通らなかった会社は全部嫌いになった。「保育園落ちた日本死ね」と同じようなものだ。

救いの手を差し伸べてくれた最強就活マン

そんな時、大手電機メーカーに内定した友達と飯を食うことになった。彼は熱心に就活のやり方を俺に教えてくれた。グループディスカッション、面接、それぞれどこを見ているのか、それに対して自分たちはどうすればいいのか、彼は実際の例を持ち出しながら、わかりやすく説明した。

「どうしてそんな就活のことがわかるんだ」と不思議に思ったので聞いてみると、彼はどうやら20冊以上の就活本を読んだそうだ。

正直、よくやってられるな、と思ったが、口に出さないでおいた。

彼は最後に、20冊以上の就活本に共通するポイントをまとめた一枚の紙を俺にくれた。「これで俺も内定か」と確信した。ちなみに今はその紙を失くしてしまったし、内容もよく覚えていない。すまん。

自信満々で臨むも秒殺された

絶対いけると思ったその後の就活。通った2つのESのうち、1つはグループディスカッションを通過したが、面接で落ちてしまった。もう1つはグループディスカッションはなく、即面接ということだったが、それも落ちた。

あっという間に弾切れになった。

周りは内定を取り始める時期。それなのに自分は弾切れでお先真っ暗。親は心配してくれるが、それも結構しんどい。

気づけばもう夏に入る頃で、こんな時期でも就活やっているやつは、陰気臭くて、いかにもダメそうな人間ばかり。もちろん俺もその1人。

他人を見て、自分の見た目、価値をまざまざと見せつけられた。

「俺って結構ブサイクなんだな」

それでもやるしかないと思って、就活を続けていた。しかしどこもエントリーする気になれず、無駄な時間だけが過ぎ去っていった。

就活をやめて、親にブチ切れられる

もう8月になっていた。クソ暑い日に、黒いリクルートスーツを着て歩いているのは天然記念物だと思う。

その日も気になっているつもりの会社の説明会に参加していた。いつものように説明を聞いたが、どうも気乗りせず、エントリーしようか迷いながら家に帰ることにした。

その会社の最寄駅、清掃員の人が丁寧に拭いていたからなのか、やけにショーウインドウが綺麗だった。

そこに雑魚そうな自分が映った。今にも背景にも溶け込みそうな儚い人間。

「こんなやつ、誰が採用するかよ。俺だっていらねーわ」

急にそう思って、俺は最強就活マンとはまた別の友達に電話した。「久しぶり~。今就活やめたから、前々から言っていたやつやらない?」

その友達とは、就活が終わったら2人でネットビジネスをやろうと話していた。 

別に就活が終わるのって、内定がもらえた時だけじゃない。自分でやめると決めたら、就活は終わる。じゃあ前々から言っていたネットビジネスやろうぜ。もしかしたら失敗するかもしれないけど、その時はその時。とりあえず次の就活が始める翌年まで、友達とネットビジネスをやってみて、ダメだったらまた就活すればいいや、と考えていた。

友達はOKだったので、後日約束して会うことになった。俺はワクワクしていた。つまらない就活をやめられるからだ。

まあそういう感じでテンション高めだったのだが、夕飯の時に、「就活やめる」と親に言ったら、とんでもなく怒られ、テンションだだ下がり。

ただ悪いことだけでもなくて、就活のストレスで大量にできたおでこのニキビが綺麗さっぱりなくなった。やっぱり就活やめてよかったなと思った瞬間だった。